2016年5月6日金曜日

2016 劇団通信1.2月号


私は幼い頃から絵描きになることが用意されているような毎日でした。父が絵を描いていたので私も当然絵の道に進ませようという親の考えであったからです。

学校から帰ると油絵の道具一式とイーゼルにはキャンバスが置いてあって、「さあ描きなさい ! 」今でいうお絵描きの時間が待っていました。日曜日には「写生に行きなさい !」と自転車に道具一式を積んで湖畔や森林へ出かけて行きました。

私も絵が好きだったので、父の敷いたレールの上を何の抵抗もなく楽しく歩いていました。ところが小学5年生の時ラジオから流れて来たMHK放送児童劇団募集のアナウンスを聞いてから、私の人生は大きく変わりました。

以来、ラジオドラマの子役からずっと曲がりなりにも声優から俳優の道へと進み、50歳で劇団四季を辞めるまで役者稼業一筋で生きてきました。そして児童劇団「大きな夢」を立ち上げたのが51歳の時、それからは子ども達と一緒にミュージカルの舞台を創ることが私の本業となってしまいました。人生はちょっとしたきっかけで大きく変わるものです。いくら夢を描いて進んでいても、全く別の人生が用意されていることもあります。

小説家の村上春樹さんは30歳 になるまでは作家になるなんて思ってもいなかったそうです。浅田次郎さんも小説家になる前は自衛隊に入隊していたというのです。世界的な企業マクドナルドの創業者レイ・クロック氏は52歳で店を立ち上げるまでは只のセールスマンだったというのです。予想もしなかった人生、どこでどんな運命的な出会いやきっかけが待ち受けているか誰にも分かりません。
それだけに生きていることは楽しく素晴らしいものだと思います。