2016年5月6日金曜日

2016 劇団通信4月号

「鎌倉子どもミュージカル」の菊池銀河が、NHKのFMラジオドラマ「青春アドベンチャー・走れ、歌鉄 !」に主役で出演し2週間に渡って彼の声がラジオから流れていました。今でこそNHKのラジオドラマを聴く人はごく少数で、余程のマニアか関係者くらしか聴かないようになってしまいましたが、テレビが普及する以前のラジオドラマは国民的な娯楽番組として日常生活に欠かせない存在でもあったのです。

終戦直後の昭和20年代人々はラジオドラマにかじりつき、小学生だった私も「笛吹き童子」や「紅孔雀」など人気番組を聴いては一喜一憂していました。その頃「君の名は」というラジオドラマの放送時間になると銭湯が空になったという有名な話がありますが、当時は各家庭に風呂があるのは珍しく、銭湯に行くのが当たり前の時代でもあったので、夕方「君の名は」の放送時間になるとラジオを聴くために銭湯はがら空きになるという社会現象にまでなったのです。

そのような昭和30年代のラジオドラマ全盛期、NHK東京放送劇団にいた黒柳徹子さん等が出演していたNHKラジオの看板番組「一丁目一番地」に、今でもサザエさんの声をやっている加藤みどりさんと一緒に私も途中からレギュラー出演することになりました。以後1000本は下らない数のラジオドラマをやりましたが、それでも菊池銀河が主演した「青春アドベンチャー」という番組枠では私は一度も主役をやったことはありませんでした。

だから教え子の彼が堂々と主役を張ったことに対しての感慨も深く、それでいて自分がもうラジオドラマにおいては化石のような存在なってしまった不思議な感覚にもとらわれながら、父親が息子に追い越されたような幸せな心境になっていました。